大槌学のすゝめ14

2014年6月9日

世界で、地球上で、ここ大槌だけ、新しい「種」のイトヨ

 かつての須賀町栄町地区にできた水たまりに生息するイトヨたち。
新しい「種」となるのでしょうか。
ボタンを押して実験結果が示されるものではありません、或(ある)いは
一朝一夕(いっちょういっせき)に片付けられるようなものでもありません。今後の地道な調査研究による成果が待たれます。
 
※レジリエンス 復元力、回復力。
心理学では、困難な状況に適応し生き延びる力、と注釈。
脆弱性の反対の概念、自発的治癒力とも解釈され、
危機管理能力やリスク対応能力の意味として知られる。
イトヨ
 ガーシュインの代表作、ラプソディ・イン・ブルー(Rhapsody in Blue、1924)。
ラプソディは、音楽用語では「狂詩曲」。クラシックにジャズの影響を受けた効果が盛り込まれた作品。
ウディ・アレンの監督作品「マンハッタン」の冒頭にも用いられ、モノクロのニューヨークに融合しています。
 過日、曽(かつ)て、彼(か)のレナード・バーンスタインが音楽監督でもあった、ニューヨーク・フィルハーモニックと、ジャズピアニスト小曽根真氏の共演に触れるという僥倖(ぎょうこう)に。演奏が終わるも、拍手が鳴り止まず。氏は、即興でBlues を。
すると、コントラバスがピアノの脇に移動しウッドベースに早変わり。
続いてトロンボーン、そしてアルトサックスを加えてカルテットでのジャズ。まさに音を楽しむ至福。楽屋に伺うと、ニューヨークへの招聘(しょうへい)がすでに決まっていました。
 そして、平成26(2014)年4月22日、ニューヨークはエイブリー・フィッシャー・ホール。
個性的な"ラプソディ・イン・ブルー"の演奏を披露、オーケストラは、明らかな熱狂の中で演奏した、とニューヨークタイムズ紙。
 毎正午、町中に流れる「ひょっこりひょうたん島のテーマ」は、小曽根氏並びに関係者の丹誠に他なりません。
 混じるはずのないものが混じる。極めて希有(けう)なことのようです。震災後、大槌の町の中で「それ」は進行しています。
 即(すなわ)ち、源水に生息していた「淡水型イトヨ」が、津波の引き波で町方にもたらされ、湧水の水たまりに入り込む。一方、「遡河(そか)型イトヨ」は春になり遡上、河口域の壊れた水路を伝い湧き水の水たまりに。同じ「イトヨ」という名前を持っていても、生物学的には異なる「種」である淡水型イトヨと遡河型イトヨ。本来は交雑しないものが、交雑。すると、そこに出現するのは、新しい「種」としての「イトヨ」。このことは、DNAを分析することで明らかになっています。
 震災前から大槌のイトヨの調査研究を進めてこられた、イトヨ研究の権威、岐阜経済大学の森誠一教授は「こうした事象が起きているのは、地球上でここ大槌だけ。国内のみならず世界中の研究者が注目しています」と。
 この交雑したイトヨが、「種」として存在していくことになるのか、もとの淡水型、或いは遡河型に戻るのか、その推移は、進化の研究というレベルに留まらず、地球の歴史上における、自然のレジリエンス(※)研究にも大いなる貢献が期待されています。
 オランダ人の動物行動学者、ニコラス・ティンバーゲンは、イトヨの本能行動に関する研究で、昭和48(1973)年にノーベル医学生理学賞を受賞しているほどです。
(大槌町教育委員会事務局生涯学習課長 佐々木健)