HOMEふるさと情報リレーコラム音楽活動を通じて、子どもたちに将来につながる経験をさせてあげたい

音楽活動を通じて、子どもたちに将来につながる経験をさせてあげたい

___TOP.png

町内在住の臺 隆明(だい たかあき)さんは、子どもたちが音楽を通して、社会とつながることができる環境を作ってあげたいと日々活動を続けています。

 

 大槌町の安渡地区で生まれ育った臺さんが、音楽と出会ったのは小学校6年生の時。父に連れられて行ったクリスマスパーティーで、バンドの生演奏を見たことがきっかけでした。

 初めて見る、ギター、ベース、ドラムの迫力のある演奏を見て聞いてとても心を打たれたそうです。

 「中でも、ドラムが不思議に思えてさぁ」

 それがきっかけとなり、臺さんは中学1年の時にドラムを始めました。近所の先輩に教えてもらいながら、仲間と楽しくバンド活動を行っていたそうです。

 中学3年の時、吹奏楽部のクラスメイトから「ドラム奏者が足りず大会に出場できないから、手伝って欲しい」と頼まれました。当時はアマチュア無線クラブに所属していた臺さんでしたが、助っ人として大会へ出場することを決意。

 吹奏楽部は沿岸地区大会、県大会と金賞を受賞して勝ち進みました。県代表で出場した東北大会では、初出場ながら銅賞をいただき、大槌中学校(現大槌学園)始まって以来の成績を収めました。

「初めてみたっけば、だんだんと意地が出てきて、面白いなと思った」

 その時の経験が、臺さんと音楽との深いつながりを生み、未来への第一歩へとなっていきました。

________.jpg

 

2012年11月。東京で行われた東日本大震災のチャリティーコンサートの時に、臺さんは『槌音プロジェクト』の始動を宣言しました。

 臺さんが代表を務める『槌音』は現在、大槌町内で音楽活動を行う方々の窓口として広く活動を行っています。

 震災後、多くのボランティア団体やアーティストの方々が大槌町へ支援に来てくれました。プロからアマチュア、団体から個人まで、支援で音楽活動に来てくれる方々を心から歓迎したい。受け入れる側の体制を整えて、大槌に来て演奏したいと言ってくれる方々をどうにか受け入れたい。そして、そんな皆さんの気持ちを大切にしていきたい!

 『槌音プロジェクト』は、そんな思いがきっかけで始まった活動です。

 

2014年からは、『エル・システマジャパン』の取り組みも行い、大槌町でヴァイオリン教室を開催しています。生徒は現在、大人と子供合わせて35名程。

 教室は、大槌の子どもたちののびのびとした良さを生かせるよう、自由でアットホームな雰囲気にしました。

「また来たい!」「ヴァイオリンを弾きたい」という子どもたちの声がよせられ、大槌教室ならではのスタイルが注目を集めています。

________.png

 

『槌音』の活動をする中で、音楽好きな建築家の方と話す機会がありました。

「大槌に何が必要か」と問われ、臺さんは「音楽をやっている子どもたちが、演奏する場所がないんだよ…」と打ち明けました。

するとその建築家の方は、「それなら作りましょうよ!」とにっこり。

「…そうだよな!作ればいんだよな、なるほどなぁ!」

臺さんはこの時、胸のうちがスーッと軽くなるのを感じ、『槌音プロジェクト』の大きな目標を「大槌に音楽ホールを造ること」と心に決めたそうです。

「ホール建設のため、毎月支援してくれる方も居て、そういう人が一人でも二人でもいると励みに頑張れるんです」。

 

 この取り組みは、もちろん「今すぐ造ろう」という訳ではなく、「ホールを造ったから終わり」でもありません。臺さんは「大槌町の現状と、町民の皆さんの“心の復興”のスピードに合わせて、ゆったり構えて進んでいきたい」と思いを語ります。

 

 

 復興に向かう中で、被災地では新たな問題や課題が見えてきます。その一つが、震災の記憶の“風化”です。

 「震災から6年が過ぎ、風化していくのは仕方ないこと。良いことも悪いことも含めて、被災した方々の“心の動き”を伝えていくべき」。

 臺さんが建設を目指す音楽ホールは、音楽を通して“震災を語り継いでいく場所”です。ゼロからスタートしたその思いは、実現に向け着実に歩んでいます。

________.png

 

幼少期に偶然「生の音楽」に触れる機会があり、それ以来ずっと音楽を生活の一部にしてきた臺さん。

 「当時、自分のようにきっかけがあっても、実際に楽器を始められる人はとても少なかったと思う。子どもを持つ親として、今の子どもたちには、音楽に触れられる機会を増やしてあげたいし、音楽を始めたいと思う子どもたちにきっかけを与えてあげたい。そして、音楽を通して将来に役立つ色々なことを学ばせてあげたいんです」。

 

音楽と触れ合う町、大槌町に夢の音楽ホールを♪

子どもたちの未来を見据える臺さんの活動は、今日も大槌に、夢と希望を与え続けています。

(KAI OTSUCHI)

 

 臺さんプロフィール.png臺 隆明(だい たかあき)さん 54歳

大槌町で生まれ育ち18歳で上京、関東で就職しその後大槌へ帰郷。 2003年から大槌中ブラスバンド少年団の父母会長、少年団代表として 音楽を通じて大槌の子どもたちの成長を見守ってきた経験から、 震災後に『槌音プロジェクト』を立ち上げる。 26歳のとき、中学時代に同じ吹奏楽部員だった裕子(ゆうこ)さんと結婚。 長女・朋美(ともみ)さん、長男・隆裕(たかひろ)さんの4人家族。 隆裕さんは現在、フリーのトランペット奏者。 ジャズユニット『TSUCHIOTO』のリーダーとして関東を中心に活躍中。

 

子どもたちが音楽に気軽に触れ合える機会を作り、音楽を通して将来につながる 経験をさせてあげたいと願う、大槌の‟音楽の父”です。

 

 

このページの先頭へ